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従業員の解雇トラブルを防ぐには?

「一方的な解雇」はほぼ確実に覆ります

「勤務態度が悪いので今日から来なくていいと伝えた」「能力不足だから即日解雇にした」—このような一方的な解雇は、後になって労働者側から無効を主張され、大きなトラブルに発展するケースが非常に多く見られます。従業員の解雇は、経営者が思っている以上にハードルが高いことをまず押さえておく必要があります。

解雇には「合理的な理由」と「相当性」が必要(労働契約法16条)

労働契約法16条は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めています。これがいわゆる「解雇権濫用法理」です。つまり、経営者が「辞めさせたい」と思うだけでは足りず、第三者(裁判所)から見ても納得できる理由と、解雇という重い処分に見合う相当性の両方が必要になります。

解雇の種類ごとに問われるポイントが異なります

解雇は大きく3種類に分かれ、それぞれ問われる要件が異なります。

  • 普通解雇:能力不足、勤怠不良、協調性の欠如などが理由。改善のための注意指導や教育を尽くしたか、他の配置転換の可能性を検討したかが重要な判断材料になります。
  • 整理解雇(いわゆるリストラ):①人員削減の必要性 ②解雇を回避する努力をしたか ③人選が合理的か ④労働者・労働組合への説明など手続きを尽くしたか、という4つの要素(整理解雇の4要件・4要素)が総合的に判断されます。
  • 懲戒解雇:就業規則に定めた懲戒事由に明確に該当していること、処分の重さが行為に見合っていること、本人に弁明の機会を与えるなど適正な手続きを踏んでいることが求められます。就業規則に懲戒事由や手続きが定められていなければ、そもそも懲戒解雇自体ができません。

解雇予告のルール(労働基準法20条)

解雇そのものが認められる場合でも、原則として少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う必要があります。予告日数が足りない場合は、不足する日数分の平均賃金を支払うことで調整することも可能です(例:10日前に予告した場合は、残り20日分の平均賃金を支払う)。天災事変などやむを得ない事由や、労働者の責めに帰すべき事由がある場合は、労働基準監督署長の認定を受けることで予告が不要になる例外もありますが、認定を受けずに「即日解雇」を行うと、それ自体が違法になる点に注意が必要です。

また、業務上の負傷・疾病により療養中の期間や産前産後休業の期間とその後30日間は、原則として解雇そのものが禁止されています(労働基準法19条)。

解雇が無効と判断されるとどうなるか

解雇が無効と判断されると、雇用契約は解雇時点にさかのぼって存続していたものとして扱われます。その結果、解雇してから判決や和解に至るまでの期間について、働いていなくても賃金を支払う義務(いわゆるバックペイ)が発生し、場合によっては復職を求められることもあります。トラブルが長期化するほど、企業側の金銭的・時間的負担は大きくなります。

裁判まで争わなくても、和解金の負担は避けられないことが多い

実際には、解雇トラブルの多くは判決まで至らず、話し合いや労働審判・訴訟の途中の和解によって決着します。「裁判で負けなければ問題ない」というものではなく、争いになった時点で、多くの場合は何らかの解決金(和解金)の支払いが前提になると考えておく必要があります。解決金の相場は解雇の正当性がどの程度かによって幅がありますが、一般的な目安として賃金の3〜6か月分程度、解雇の正当性に問題があるケースではそれ以上(6か月〜1年分程度)になることも珍しくありません。争いが表面化した段階ではすでにこの負担を避けにくくなっているため、解雇に踏み切る前の備えが結果的にコストを抑える最善策になります。

トラブルを防ぐために日頃からできること

解雇トラブルの多くは、「解雇する段階」ではなく、その手前の日常的な労務管理に原因があります。次のような備えが、いざというときに会社を守る備えになります。

  • 就業規則に、普通解雇・懲戒解雇それぞれの事由と手続きを具体的に定めておく
  • 能力不足や問題行動があった場合、口頭注意で終わらせず、日時・指導内容・経過などを記録に残しておく
  • 解雇に踏み切る前に、配置転換や退職勧奨(合意による退職)など、他の選択肢を検討する
  • 懲戒処分を行う際は、本人に弁明の機会を与え、就業規則に基づいた手続きを踏む

特に「言った言わない」のトラブルを避けるためには、注意指導の記録化が最も費用対効果の高い対策です。日頃の記録が、いざというときに会社を守る一番の証拠になります。

解雇は、正しい手順を踏まずに進めてしまうと、かえって会社側が不利になる場面が多い分野です。「そろそろ辞めてもらいたい社員がいる」という段階でも、実際に通知する前にご相談いただくことで、取れる選択肢が大きく変わります。法的リスクを整理し、御社にとって最適な対応策をご提案します。

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